「縞模様」の歴史
自然界に存在する精緻で色鮮やかな縞模様は元来、危険を知らせるために進化したと言われています。
中世の時代、紋章学において、縞模様はより違反性の少ない暗示的な意味として国家の転覆と関連づけられ、のちに所属や身分を表すための紋章や家紋、盾、旗を飾りました。
フランス国旗を飾る3色からなる縞模様トリコロールは、1789年フランス革命の理想と革命のシンボルでした。
19世紀になるとエレガントなストライプを取り入れたディレクトワール様式と呼ばれる服装や室内装飾が流行し、アール・デコの風潮の中でさらに広く取り入れられるようになりました。
20世紀には、自由や陽気さ、楽しみの精神と結びついたモダンなストライプが登場します。
20年台に、フランスのカンヌからイタリアへと続くリヴィエラ海岸から流行した水着や、海辺や砂浜にあふれるマリンルック、あるいはクリケットやラグビーなどのスポーツウェアにも、無邪気でカラフルな縞模様がいたるところで見られるようになりました。
ストライプ柄の布地は、ジオメトリックなコントラストによって体の自然な曲線を引き立たせます。
60年台のモード界の女王ダイアナ・ヴリーランドは洗練と独創性、生命力といった要素を感じさせるストライプを好んで着用し、パークアヴェニューのアパートの居間の一つを完全にストライプで埋め尽くしました。
芸術の主題となり得る「色彩」
バウハウスをはじめとするヨーロッパにおける芸術運動では、科学的進歩やある種の近代思想と呼応する意味合いで、線と色彩の純粋幾何学を探求しました。
アメリカ人アーティストのジョージア・オキーフは、色彩の世界への実質的な耽溺をこのように表現しています。
『私は、色と形によって
言葉で表せないことを表現できると
発見しました。』
積極的にストライプについて解釈をしてきた1960年代のアメリカの抽象表現主義者たちは、カラフルな線を表現の手法に取り入れました。
ストライプが印象的なマーク・ロスコの「colorfield painting」や、ジーン・デイヴィスあるいはバーネット・ニューマンの謎めいた対話を秘めたカラーフィールド。
同じ時代、ドイツ人のゲルハルト・リヒターは、すべての色をグラデーション化した巨大な長方形の集合体シリーズ「Color chart paintings」を創作しました。
最後に、ミニマリストのフランク・ステラやソル・ルウィット、ショーン・スクリーたちは、幾何学の概念を超えて、まるで音楽のように色調のトーンを奏でました。
色とストライプは、アイデンティティの規範やファッション、グラフィカルなモチーフとしての存在を超えて芸術の主題、光となるのです。
「宇宙は何かなる無の中に広がる物質だということを理解することができるなら、ストライプにチェックを合わせるのも簡単だ。」
アルベルト・アインシュタイン