流れ落ちる滝や丘陵にせせらぐ小川、岩清水のきらめく反射、虹を描く雫……。
小さな水たまりから広大な海洋まで、人類はいつの時代も神秘性や流動性、そしてつかみどころのなさを想起させる水に魅了されてきました。
古代より水道技師たちは飲料水を流通させるための設備を考案し、その当時もっとも美しかった屋敷や宮殿、公衆浴場あるいはローマの街に華やかさを添える人工の泉や滝、噴水に興味を持ちました。
長い間「giochi d'acqua(水の戯れ)」と呼ばれた噴水装置は、イタリアの伝統でした。なかでも16世紀にメディチ家によって建てられたトスカーナ地方のヴィラ・ディ・プラトリノは有名です。
そこには驚きに満ちた華麗な自動噴水設備や、時には香りをつけた水が吹き出して訪問客を楽しませた「scherzi d’acqua(水の冗談)」、丘を流れる清流、人工の洞窟、詩人オウィディウス の『変身物語』の登場人物の彫刻群や人工池、巨大なニンフの神殿などが配されていました。
現代では失われてしまった、このイタリア・ルネサンスを代表する、マニエリスム様式の壮大な庭園は、水道技師ベルナルド・ブオンタレンティが考案した庭園や洞窟の自動装置を動かすために水を補給する画期的な水道設備を備えていました。
1580年頃にモンテーニュは、この水による劇場的効果とその壮大な技術を賞賛し、著書『イタリア旅行記』の中で以下のように記しています。
「人物や動物、神々や勇者たちの彫刻の驚きのカルーセル。
洞窟や泉、水の戯れと冗談。
水力で動く自動装置のスペクタクル。
うっとりするような音楽を奏でる水動オルガン、
鳥の声を真似る自動機械……。
プラトリノ公園が世界でもっとも
模倣されている場所なのも当然のことであろう。」
この言葉がきっかけとなり、彼の死後30年経ってからルイ14世はヴェルサイユ宮殿の大規模な建設に着手しました。
営業時間 : 月〜金(土日祝日を除く)11:00 - 17:00
0120-09-1803